巡回群

巡回群とは?

前回は「群の生成」というものを説明しました。
それでは、今回はたった一つの元から生成される群についてお話しましょう。


$\displaystyle{a}$を、とある群の一つの元とします。
このとき、$\displaystyle{\{a\}}$から生成される群は、
$\displaystyle{\{\cdots,a^{-4},a^{-3},a^{-2},a^{-1},e,a,a^2,a^3,a^4,\cdots\}}$
となります。
このように、たった一つの元$\displaystyle{a}$から生成される群のことを巡回群と言います。
$\displaystyle{}$から生成される巡回群は、$\displaystyle{{\lt}a{\gt}}$と表されます。


ここで、例えば$\displaystyle{a^3}$というのは、 元$\displaystyle{a}$を3回演算するという意味で、
$\displaystyle{a^3=aaa}$
という意味です。
一般的に
$\displaystyle{a^n=\underbrace{aaa{\cdots\cdots\cdots}a}_{n個}}$ です。



同じように、
$\displaystyle{a^{-n}=(\underbrace{aaa{\cdots\cdots\cdots}a}_{n個})^{-1}=\underbrace{a^{-1}a^{-1}a^{-1}{\cdots\cdots\cdots}a^{-1}}_{n個}}$
となります。

巡回群の例

例えば、整数全体の集合$\displaystyle{\mathbb{Z}}$$\displaystyle{+}$という演算子に関して群をなしていますが、
整数の全ての元(数のこと)は、「1」という元から生成されているとも考えられます。
全ての整数は、1を何回か足していく(あるいは−1を何回か足していく)と作ることができますので、
整数の$\displaystyle{+}$に関する群は、1から生成された巡回群です。$\displaystyle{{\lt}1{\gt}}$です。


同じように、
$\displaystyle{{\lt}2{\gt}=\{\cdots,-8,-6,-4,-2,0,2,4,6,8,\cdots\}}$
というように、2からなる巡回群は2の倍数を全て集めた集合です。



次は、$\displaystyle{\times}$という、掛け算に関して考えましょう。
$\displaystyle{i}$は虚数で、$\displaystyle{i^2=-1}$となります。
だから、
$\displaystyle{{\lt}i{\gt}=\{i,-1,-i,1\}}$
となります。

巡回群の可換性

$\displaystyle{m}$$\displaystyle{n}$を整数(もちろん負の整数でも0でもOK!)とします。
そうすると、$\displaystyle{a}$から生成される巡回群$\displaystyle{{\lt}a{\gt}}$の任意の元は、
$\displaystyle{a^m}$の形に表すことができます。


それでは、$\displaystyle{a^m}$$\displaystyle{a^n}$を、巡回群の元としますと、
$\displaystyle{a^ma^n=a^{m+n}}$
という関係が実は成り立ちます。
この式は、mとnが負の整数の時でも0の時でも、当然成り立ちます。
この性質は、自分で確かめて、できれば証明してみるのがよいでしょう。

すると、
$\displaystyle{a^na^m=a^{n+m}=a^{m+n}=a^ma^n}$
となります。


つまり、どういうことかといいますと、巡回群は実は可換群なのです!!!
普通、群はab=baのような交換法則が成り立つとは限りません。
しかし巡回群は必ず交換法則が成り立つのです。

そう考えると、整数の$\displaystyle{+}$に関する群が可換性があるのも納得が行きませんか?

有限巡回群

巡回群$\displaystyle{{\lt}a{\gt}}$が有限群のとき、有限巡回群と言います。

もし有限巡回群の場合、
$\displaystyle{a}$を何回か演算したら、必ず単位元に戻ります。
つまり$\displaystyle{a^n=e}$となるような自然数$\displaystyle{n}$が存在します。

これは考えてみれば簡単なことであり、
もし有限群であれば、異なる自然数$\displaystyle{n}$$\displaystyle{m}$に対して、
$\displaystyle{a^n=a^m}$
となります。
なぜなら、「有限群」ですので、かならず重複が起きます。
この式の両辺に、$\displaystyle{a^{-n}}$を演算させて、
$\displaystyle{a^{n-n}=a^{m-n}}$
$\displaystyle{e=a^{m-n}}$
となります。
つまり $\displaystyle{a}$$\displaystyle{m-n}$回演算させれば単位元に戻ります。


ということは、今度は$\displaystyle{a}$$\displaystyle{m-n+1}$回演算させたらどうなるでしょうか?と言いますと、
$\displaystyle{a^{m-n+1}=a^{m-n}a=ea=a}$になります。

つまり、有限巡回群では、同じ元を何回も演算させたら、もとに戻るということです。
何回演算させても元にもどりぐるぐる全ての元を回る・・・これが巡回群の言葉の成り立ちでしょうか?

戻る