群の生成
Follow @suridaisuki

部分群ではないもの

ある群$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分集合$\displaystyle{\mathbb{H}}$が、
独立してまた一つの群となっているとき、
$\displaystyle{\mathbb{H}}$$\displaystyle{\mathbb{G}}$の「部分群」と言うのでした。

前回(前々回)は、例として以下のような群を挙げました。
$\displaystyle{e}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{c}$
$\displaystyle{e}$ $\displaystyle{e}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{c}$
$\displaystyle{r}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{e}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{c}$ $\displaystyle{a}$
$\displaystyle{l}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{e}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{c}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{b}$
$\displaystyle{a}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{c}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{e}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{r}$
$\displaystyle{b}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{c}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{e}$ $\displaystyle{l}$
$\displaystyle{c}$ $\displaystyle{c}$ $\displaystyle{b}$ $\displaystyle{a}$ $\displaystyle{l}$ $\displaystyle{r}$ $\displaystyle{e}$

この群の部分群には、以下のものがありました。
$\displaystyle{\{e,r,l,a,b,c\}}$
$\displaystyle{\{e,r,l\}}$
$\displaystyle{\{e,a\}}$
$\displaystyle{\{e,b\}}$
$\displaystyle{\{e,c\}}$
$\displaystyle{\{e\}}$


さて、rだけからなる集合
$\displaystyle{\{r\}}$
は、もとの集合の部分集合ではありますが部分群ではありません。
前回説明した通り、
部分群は
のような性質を持っていることが必要十分でした。
この、$\displaystyle{r}$だけの集合は、逆元を持っていませんし、演算子に関しても閉じていません。

だったら、この集合に逆元を加え、
さらに演算子に閉じるように適当に元を加えてやれば、
部分群を作ることができませんか???



まず、この集合
$\displaystyle{\{r\}}$
は、$\displaystyle{r}$の逆元が含まれていません。
群表によると、この$\displaystyle{r}$の逆元は$\displaystyle{l}$なので、
これをもとの集合に加えてやると、
$\displaystyle{\{r,l\}}$
となります。
これで、「全ての元に対し、逆元が存在」は満たされました。

しかし、まだもう一つの条件「演算子に関して閉じている」はまだまだ満たされていません。

なぜなら、
$\displaystyle{rl}$$\displaystyle{e}$となりますが、
この結果が、この集合の中に入っていません。
だったら、この結果をもとの集合に入れてしまえばいいわけです。

そうすると、
$\displaystyle{\{e,r,l\}}$
となり、やっと部分群になりました。

このように、与えられた元から、適当な元をいくつか選び出して部分群を作ることができます。

整数の例

$\displaystyle{\mathbb{R}}$を群として、 その部分集合$\displaystyle{\mathbb{S}}$を考えます。

たとえ、$\displaystyle{\mathbb{S}}$が部分群になっていなくても、
という手順で適当な元を加えることにより、部分群にすることができます。

これじゃあとても分かりにくいと思うので、例を挙げて説明していきます。


整数$\displaystyle{\mathbb{Z}}$は演算子$\displaystyle{+}$に関して群となります。

この整数の部分集合$\displaystyle{\mathbb{S}}$を、
$\displaystyle{\mathbb{S}=\{6,9\}}$
ととります。
この集合$\displaystyle{\mathbb{S}}$は、逆元もないし演算子に関して閉じてもいないので、部分群ではないです。


さて、これに手順1.により、新しく元を含めていきます。
この集合は$\displaystyle{6}$$\displaystyle{9}$の二つの元を含んでいますが、
$\displaystyle{6}$の逆元は$\displaystyle{-6}$に、 また$\displaystyle{9}$の逆元は$\displaystyle{-9}$になります。
こうして、部分集合$\displaystyle{\mathbb{S}}$に、手順1.によって新しく元を加えた集合を$\displaystyle{\mathbb{S}'}$とすると、
$\displaystyle{\mathbb{S}'=\{-9,-6,6,9\}}$
となります。


さて、次は手順2.ですねっ
まず、集合$\displaystyle{\mathbb{S}'}$の適当な元を取ってきて、演算させます。
例えば、$\displaystyle{-6}$$\displaystyle{6}$をとってくると、
$\displaystyle{-6+6=0}$で、
整数$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の演算子$\displaystyle{+}$に関する単位元である$\displaystyle{0}$ができました。

今度は、$\displaystyle{-6}$$\displaystyle{9}$をとってきて演算させると、
$\displaystyle{-6+9=3}$になり、$\displaystyle{3}$が新たに加わります。
同様に、$\displaystyle{-9}$$\displaystyle{6}$をとってきて演算させ、$\displaystyle{-3}$をつくり・・・

このように、どんどん繰り返していって新しい元を加えていきます。
そうして新たに作られた集合を $\displaystyle{\mathbb{S}''}$とすると、
$\displaystyle{\mathbb{S}''=\{\cdots,-6,-3,0,3,6,\cdots\}}$
となります。
これは、(負の数や0も含んだ)3の倍数を全て集めた集合と考えられます。
(なんで、3の倍数全体からなる集合になったの?という証明はこの場では省略します・・・)

これでも、確かに演算子に関して閉じているので、群になります。

生成系

さて、例が長すぎましたが・・・本題に移ります。

最初の例では、まず
$\displaystyle{\{r\}}$
のような、$\displaystyle{r}$だけからなる集合に適当に元を加えていくことにより、
$\displaystyle{\{e,r,l\}}$
のような部分群を作ることができました。
これを、$\displaystyle{\{r\}}$から生成された部分群といい、
また生成の材料でもある$\displaystyle{\{r\}}$生成系と言います。



次の例では、整数$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の部分集合である
$\displaystyle{\mathbb{S}=\{6,9\}}$
を生成系とし、
$\displaystyle{\mathbb{S}''=\{\cdots,-6,-3,0,3,6,\cdots\}}$
というような$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の部分群を生成しました。

おさらい

ここでもう一度以上のことをまとめたいとおもいます。

$\displaystyle{\mathbb{G}}$を群とする。 $\displaystyle{\mathbb{S}}$$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分集合としたとき、
のようにしてつくられた$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分集合 $\displaystyle{\mathbb{S}''}$を、$\displaystyle{\mathbb{S}}$から生成された$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分群という。




ところで、$\displaystyle{\mathbb{S}''}$って本当に$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分群になっているの??という疑問が残りますが・・・

それは、
$\displaystyle{\mathbb{S}'}$$\displaystyle{\mathbb{S}}$の元自身とその逆元を全て含んでいるので・・・
つまり
$\displaystyle{x\in\mathbb{S}'{\Rightarrow}x^{-1}\in\mathbb{S}'}$$\displaystyle{\cdots\cdots(*)}$
であり、
また $\displaystyle{\mathbb{S}''}$の任意の元は$\displaystyle{\mathbb{S}'}$の有限個の元を演算したものでもあるので・・・
つまり$\displaystyle{a,b\in\mathbb{S}''}$であれば、
$\displaystyle{a=x_1x_2{\cdots}x_n}$
$\displaystyle{b=y_1y_2{\cdots}y_m}$
のように表すことができます。
但し、
$\displaystyle{x_1,x_2,\cdots,x_n,y_1,y_2,\cdots,y_m\in\mathbb{S}'}$
です。


そう考えますと、
$\displaystyle{ab=x_1x_2{\cdots}x_ny_1y_2{\cdots}y_m}$
であり、よって
$\displaystyle{ab\in\mathbb{S}''}$$\displaystyle{\cdots\cdots(1)}$
であることが分かります。

また、(*)より
$\displaystyle{a^{-1}=x_n^{-1}x_{n-1}^{-1}{\cdots}x_1^{-1}}$
となり、
$\displaystyle{a^{-1}\in\mathbb{S}''}$$\displaystyle{\cdots\cdots(2)}$
であり、
結局(1)と(2)より、部分群の必要十分条件を満たしているので、部分群になります。




また、$\displaystyle{\mathbb{S}''}$$\displaystyle{\mathbb{S}}$を含む$\displaystyle{\mathbb{G}}$の最小の部分群でもあります。

「最小の」という言葉にピンと来なければ、最も集合の元の数が少ないもの、というように考えて下さい。
もし、あなたが順序関係をマスターしていれば、
順序関係$\displaystyle{\in}$に関する最小元のことを意味しています。

戻る