集合と元との演算1

集合と元との演算

$\displaystyle{\mathbb{G}}$の二項演算子を、$\displaystyle{\circ}$とします。
また、$\displaystyle{\mathbb{H}}$を、群$\displaystyle{\mathbb{G}}$の部分集合とします。
(↑↑部分群じゃなくてもよいです。)
そして、$\displaystyle{a}$を群$\displaystyle{\mathbb{G}}$の元の一つとします。


そうすると、これからは以下のような表記に出会うことが出てくると思います。
$\displaystyle{a\circ\mathbb{H}}$
これは、
$\displaystyle{a\circ\mathbb{H}=\{a{\circ}h|h\in\mathbb{H}\}}$
という意味です。


もし、二項演算子が省略されている場合は、
$\displaystyle{a\mathbb{H}}$
というような書き方もします。

まず例から

例を挙げましょう。

例えば、整数全体の集合$\displaystyle{\mathbb{Z}}$は、
$\displaystyle{+}$という演算子、つまり足し算に関して群になっています。

そこで、$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の部分集合$\displaystyle{\mathbb{H}}$を、
例えば
$\displaystyle{\mathbb{H}=\{-3,0,1,4\}}$
としましょう。

そうしますと、
例えば、$\displaystyle{6+\mathbb{H}}$は、
$\displaystyle{6+\mathbb{H}}$
$\displaystyle{=\{6+(-3),6+0,6+1,6+4\}}$
$\displaystyle{=\{3,4,6,7\}}$
となります。


今までは二項演算子とは元と元の間に働くものでしたが、
こう考えると、二項演算子とは、元と群の部分集合の間にも働くことが分かります。

でも、元と元の間に二項演算子を働かせたら元になりますが、
元と集合に二項演算子を働かせたら、集合になります!!!

例えば、2+3=5のように、
整数全体の集合$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の元である2と3に、+を働かせたら5になりますが、
この5も集合$\displaystyle{\mathbb{Z}}$の元です。

しかし、上の例のように$\displaystyle{6+\mathbb{H}}$は、集合になります。

逆の場合

先ほどは、
$\displaystyle{a{\circ}\mathbb{H}}$
をやりましたが、
当然
$\displaystyle{\mathbb{H}{\circ}a}$
という記法もあります。
これは、
$\displaystyle{\mathbb{H}{\circ}a=\{h{\circ}a|h\in\mathbb{H}\}}$という意味になります。

ただ、左に演算させるか、右に演算させるかの違いです。
もし$\displaystyle{\circ}$が可換な演算子の場合、
$\displaystyle{a{\circ}\mathbb{H}=\mathbb{H}{\circ}a}$
が成り立つのは明らかだと思います。

次は集合と集合の演算

同様に、二項演算子$\displaystyle{\circ}$に関する群$\displaystyle{\mathbb{G}}$について、
二つの部分集合$\displaystyle{\mathbb{H}_1}$と、$\displaystyle{\mathbb{H}_2}$をとってきます。

このとき、
$\displaystyle{\mathbb{H}_1\circ\mathbb{H}_2}$
というのを、
$\displaystyle{\mathbb{H}_1\circ\mathbb{H}_2=\{h_1{\circ}h_2|h_1\in\mathbb{H}_1,h_2\in\mathbb{H}_2\}}$
とします。

こうして考えると、
二項演算子は集合と集合の間にも働くことが分かります。


当然ですが$\displaystyle{\circ}$の記号が省略されて
$\displaystyle{\mathbb{H}_1\mathbb{H}_2}$
と書かれることもあります。

結合律

ところで、群の公理は4つ程ありましたよね?覚えていますか?

そのうちの一つに、「結合律」というものがありました。
結合律というのは、どんな元$\displaystyle{a,b,c}$を選んでも、
$\displaystyle{(ab)c=a(bc)}$
が成り立つ規則のことでした。
結合律が成り立てば、どこから演算しても同じ演算結果が得られる、ということでした。


今回は、元と集合の間、または集合と集合の間にも二項演算子が働く、ということを言いましたが、
その時でも実は結合律が成り立ちます。
$\displaystyle{a,b,c\in\mathbb{G}}$
$\displaystyle{\mathbb{H},\mathbb{H}_1,\mathbb{H}_2,\mathbb{H}_3\subset\mathbb{G}}$
としたとき、以下の三つが成り立ちます。
$\displaystyle{(a\mathbb{H})b=a(\mathbb{H}b)}$
$\displaystyle{(\mathbb{H}_1a)\mathbb{H}_2=\mathbb{H}_1(a\mathbb{H}_2)}$
$\displaystyle{(\mathbb{H}_1\mathbb{H}_2)\mathbb{H}_3=\mathbb{H}_1(\mathbb{H}_2\mathbb{H}_3)}$ この証明は省略しますが、
もし余裕があれば各自確かめてみて下さい

逆元

以上のように、集合同士で演算をすることができました。

また、
$\displaystyle{\mathbb{H}^{-1}}$
のように、集合の逆元を表すこともあります。
$\displaystyle{\mathbb{H}^{-1}=\{h^{-1}|h\in\mathbb{H}\}}$
という定義になっています。
つまり、 $\displaystyle{\mathbb{H}^{-1}}$とは$\displaystyle{\mathbb{H}}$の逆元を全て集めた集合になりますね。




ところで・・・まぁ大丈夫かとは思いますが、
$\displaystyle{\mathbb{H}\mathbb{H}^{-1}=\{e\}}$
なことにはなりませんので、ご注意を。

一般的に$\displaystyle{\mathbb{H}\mathbb{H}^{-1}}$は少しややこしい形になりますm(_ _)m

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