開基
位相にしよう
位相はご理解できましたか?
$\displaystyle{\mathbb{X}=\{a,b,c,d,e\}}$
$\displaystyle{\mathscr{T}=\{\phi,\{a\},\{d\},\{a,d\},\{c,d\},\{d,e\},\{a,c,d\},\{a,d,e\},\{c,d,e\},\{b,c,d,e\},\{a,c,d,e\},\mathbb{X}\}}$
このとき$\displaystyle{\mathscr{T}}$は$\displaystyle{\mathbb{X}}$の位相になっていますよね?
ここで、
$\displaystyle{\mathscr{B}=\{\{a\},\{d\},\{c,d\},\{d,e\},\{b,c,d,e\}\}}$
とします。
このとき$\displaystyle{\mathscr{B}}$は$\displaystyle{\mathbb{X}}$の位相になってません。
位相の公理[O1]のように、空集合を含んでいません。
また位相の公理[O2]のように、
$\displaystyle{\mathscr{B}}$の中から適当な元をとって、その和集合をとったもので
$\displaystyle{\mathscr{B}}$に含まれていないものがあります。
例えば{a}と{d}は2つとも$\displaystyle{\mathscr{B}}$の元ですが、
その和集合{a,d}は$\displaystyle{\mathscr{B}}$に含まれていません。
・・・じゃあ、ここで逆の発想(?)です。
「それなら、位相となるように、適当なものを加えてやればいいじゃない?」
例えば$\displaystyle{\mathscr{B}}$の元{a}と{d}に対し、
{a}∪{d}={a,d}も$\displaystyle{\mathscr{B}}$に加えていきます。
次は$\displaystyle{\mathscr{B}}$から{a}と{d}と{c,d}を持ってきて、
{a}∪{d}∪{c,d}={a,c,d}も$\displaystyle{\mathscr{B}}$に含まれていないから、
それを新しく付け加える・・・という感じで。
このようにして、適当な$\displaystyle{\mathscr{B}}$の元をいくつかとってきて、
その和集合を新しく付け加える・・・という作業をどんどんしていけば、
結果として位相の公理[O2]を満たすことになります。
演習問題♪
じゃぁ、例を出していきましょっか♪
$\displaystyle{\mathbb{X}=\{a,b,c,d\}}$
$\displaystyle{\mathscr{B}=\{\{a\},\{c\},\{b,c\},\{c,d\}\}}$
さて、これから適当な集合をいろいろとってきて、和集合をつくります。
{a}∪{c}={a,c}
{a}∪{b,c}={a,b,c}
{a}∪{c,d}={a,c,d}
{b,c}∪{c,d}={b,c,d}
{a}∪{b,c}∪{c,d}={a,b,c,d}=$\displaystyle{\mathbb{X}}$
また、ゼロ個の元をとってきて、その和集合は空集合、という理由で、空集合$\displaystyle{\phi}$も加えます(ちょっと強引に感じるかもしれないですが・・・)
・・・以上で、和集合で作れて$\displaystyle{\mathscr{B}}$にはないものは、全部かな?
これらを加えたものを$\displaystyle{\mathscr{T}}$とすると
$\displaystyle{\mathscr{T}=\{\psi,\{a\},\{c\},\{a,c\},\{b,c\},\{c,d\},\{a,b,c\},\{a,c,d\},\{b,c,d\},\mathbb{X}\}}$
となります。
もう$\displaystyle{\mathscr{T}}$は$\displaystyle{\mathbb{X}}$の位相になってますよね?
このようにして、位相になっていない$\displaystyle{\mathscr{B}}$から
位相$\displaystyle{\mathscr{T}}$が生成されたとき、
$\displaystyle{\mathscr{B}}$を$\displaystyle{\mathscr{T}}$の
開基といいます。
つまり開基とは、位相をつくる材料なのです。
ここで、位相を生成していく過程で、
{a}∪{b,c}∪{c,d}={a,b,c,d}=$\displaystyle{\mathbb{X}}$
と、全体集合が作れました。
このように、位相を生成していく過程で、全体集合ができる必要があります。
なぜなら位相の公理[O1]では、全体集合も含まなければなりません。
もし全体集合ができなかったら、これは開基にはなりません。
開基になれないもの
それでは、次は
$\displaystyle{\mathbb{X}=\{a,b,c\}}$
$\displaystyle{\mathscr{B}=\{\{a,b\},\{b,c\}\}}$
を考えましょう。
これで、上と同じように位相を生成しようとすると・・・
{a,b}∪{b,c}={a,b,c}=$\displaystyle{\mathbb{X}}$で、それと空集合を加えて
$\displaystyle{\mathscr{T}=\{\psi,\{a,b\},\{b,c\},\mathbb{X}\}}$
ですが、これは位相になっていません。
なぜなら、
{a,b}∩{b,c}={b}
は、$\displaystyle{\mathscr{T}}$に含まれていないため、
[O3]を満たしていません。
中には、このように位相になれないため、
開基にはなれないものもあります。
開基となる条件
じゃぁ、どういうときに開基となってくれるのでしょうか?
$\displaystyle{\mathscr{T}}$が
$\displaystyle{\mathbb{X}}$の位相になっているとき、
$\displaystyle{\mathscr{T}}$の部分集合
$\displaystyle{\mathscr{B}}$が
$\displaystyle{\mathscr{T}}$の開基になっているとは、
$\displaystyle{\mathscr{T}}$の任意の元は
$\displaystyle{\mathscr{B}}$の元を任意個とって、その和集合で表わせる・・・
これが開基の定義の言い換えです。
(この場合『任意個』なので、0個の元をとればその和集合は自然に空集合になります。0個も“任意個”として考える!!)
実は、この定義と同値な条件があります。
$\displaystyle{\mathscr{T}}$が
$\displaystyle{\mathscr{B}}$の開基になっているとは・・・
$\displaystyle{\forall{A}\in\mathscr{T}\forall{p\in{A}}\exists{B\in\mathscr{B}},p{\in}B{\subset}A}$→
証明
いきなり、記号ばっかしで、慣れないうちは何を言っているのか分かりにくいかもしれませんが、
こういうものにも慣れていいくのも大切です。
この条件は、開基になっているかどうかを調べるのに、
後に使うことがあります。
開基の例
例えば、開区間$\displaystyle{(a,b)}$を考えます。
実は開区間全体の集合は$\displaystyle{\mathbb{R}}$上の通常の位相の開基となります!!!
実際、通常の位相における開集合は、開区間の和集合で表せますね!!