最大元と最小元が存在しない例

最大元・最小元は存在するとは限らない

前回は、最大元・最小元を解説しました。
しかし、全ての順序関係に最大元や最小元が必ず存在するとは、限りません。

いかに、その例をいくつか示します。

存在しない例1

たとえば、自然数全体の集合を考えましょう。
自然数は普通、記号$\displaystyle{\mathbb{N}}$を使って表されます。

さて、自然数の中で、最小元は
$\displaystyle{\min\mathbb{N}=1}$です。
だって、自然数の中で一番小さな元は1だからです。

しかし、
$\displaystyle{\max\mathbb{N}}$
は・・・?

自然数は、どこまでも無限に大きくなっていきます。
つまり、自然数には最大元は存在しません。


同様に、今度は整数全体$\displaystyle{\mathbb{Z}}$を考えてみますと、
今度は、最小元も最大元も存在しません。
なぜなら、整数は負の数も含んでしまうため、
小さくなろうとすれば無限に小さくなるからです。


このように、上か下に限りのない集合は、
最大元や最小元は存在しないことが分かります。

このように、上に(下に)限りのない集合のことを、
上に(下)に有界でないと、いいます。

存在しない例2

自然数など、上に限りのない集合には、
最大元が存在しません。


それでは、上に有界な集合、
例えば1より大きな数を含まない集合は最大元を含むでしょうか?

例えば以下の集合、
$\displaystyle{[0,1)=\{n|0{\leqq}n{\lt}1\}}$
を考えましょう。

この集合は、0以上かつ1より小さな数を全て含んだ集合です。

さて、この集合の最大元と最小元は何でしょうか?

最小元は、
$\displaystyle{\min[0,1)=0}$
となります。


しかし、最大元は、
$\displaystyle{\max[0,1)=1}$
でしょうか???


いいえ、1はこの集合の元に含まれていません。
この集合の元は、1より小さな数のはずです。

だったら最大元は0.9?
いや、0.9より大きな元0.99も存在します。

つまり、この集合には最大元が定義しようがないのです。
この場合も、最大元は存在しないと考えます。

存在しない例3

ところで、先ほどの例
$\displaystyle{[0,1)}$
のように、
0以上で1より小さな数は、実数の範囲では無数に存在します。

つまり、この集合は無限集合です。

以上の通り、無限集合には最大元や最小元が存在しないことがある、ということです。

しかし、有限集合でも、全順序関係でなければ最大元や最小元が存在しない可能性があります。
例えば、全順序集合と半順序集合のページで定義したような、
$\displaystyle{\begin{pmatrix}a_1\\a_2\end{pmatrix}{\leqq}\begin{pmatrix}b_1\\b_2\end{pmatrix}{\Leftrightarrow}a_1{\leqq}b_1かつa_2{\leqq}b_2}$
ような順序関係≦は、半順序関係になります。

この順序関係では、
$\displaystyle{\begin{pmatrix}2\\4\end{pmatrix}{\leqq}\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}}$
$\displaystyle{\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix}{\leqq}\begin{pmatrix}2\\4\end{pmatrix}}$
も成り立たたないはずですが、



もしこの二つの元を含んだ集合で、
$\displaystyle{\max\{\begin{pmatrix}3\\1\end{pmatrix},\begin{pmatrix}2\\4\end{pmatrix}\}}$ を求めようとしても、困ってしまうわけです。

お互い大小関係が定義されていないわけですから、
どっちが大きいの?ということになりかねません。

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