HoareAsLogic_J: 論理としてのホーア論理
Hoare_J.vにおけるホーア論理の提示を「モデル理論的」("model-theoretic")
に行うこともできたでしょう。
それぞれのコンストラクタに対する証明規則をプログラムの振舞いについての「定理」として提示し、
プログラムの正しさ(ホーアの三つ組の正しさ)の証明は、
それらの定理をCoq内で直接組み合わせることで構成するのです。
ホーア論理を提示するもう一つの方法は、完全に別個の証明体系を定義することです。 コマンドやホーアの三つ組等についての公理と推論規則の集合を定めます。 ホーアの三つ組の証明とは、定義されたこの論理で正しく導出されたもののことになります。 こうするためには、 新しい論理で正しい導出(valid derivations)の帰納的定義を与えれば良いのです。
ホーア論理を提示するもう一つの方法は、完全に別個の証明体系を定義することです。 コマンドやホーアの三つ組等についての公理と推論規則の集合を定めます。 ホーアの三つ組の証明とは、定義されたこの論理で正しく導出されたもののことになります。 こうするためには、 新しい論理で正しい導出(valid derivations)の帰納的定義を与えれば良いのです。
Inductive hoare_proof : Assertion → com → Assertion → Type :=
| H_Skip : ∀ P,
hoare_proof P (SKIP) P
| H_Asgn : ∀ Q V a,
hoare_proof (assn_sub V a Q) (V ::= a) Q
| H_Seq : ∀ P c Q d R,
hoare_proof P c Q → hoare_proof Q d R → hoare_proof P (c;d) R
| H_If : ∀ P Q b c1 c2,
hoare_proof (fun st => P st ∧ bassn b st) c1 Q →
hoare_proof (fun st => P st ∧ ~(bassn b st)) c2 Q →
hoare_proof P (IFB b THEN c1 ELSE c2 FI) Q
| H_While : ∀ P b c,
hoare_proof (fun st => P st ∧ bassn b st) c P →
hoare_proof P (WHILE b DO c END) (fun st => P st ∧ ~ (bassn b st))
| H_Consequence : ∀ (P Q P' Q' : Assertion) c,
hoare_proof P' c Q' →
(∀ st, P st → P' st) →
(∀ st, Q' st → Q st) →
hoare_proof P c Q
| H_Consequence_pre : ∀ (P Q P' : Assertion) c,
hoare_proof P' c Q →
(∀ st, P st → P' st) →
hoare_proof P c Q
| H_Consequence_post : ∀ (P Q Q' : Assertion) c,
hoare_proof P c Q' →
(∀ st, Q' st → Q st) →
hoare_proof P c Q.
Tactic Notation "hoare_proof_cases" tactic(first) ident(c) :=
first;
[ Case_aux c "H_Skip" | Case_aux c "H_Asgn" | Case_aux c "H_Seq"
| Case_aux c "H_If" | Case_aux c "H_While" | Case_aux c "H_Consequence"
| Case_aux c "H_Consequence_pre" | Case_aux c "H_Consequence_post" ].
例えば、ホーアの三つ組
{{assn_sub X (X+1) (assn_sub X (X+2) (X=3))}} X::=X+1; X::=X+2 {{X=3}}.
の導出を表現する証明オブジェクトを構成しましょう。 証明オブジェクトを構成するのに Coq のタクティックを使うことができます。
{{assn_sub X (X+1) (assn_sub X (X+2) (X=3))}} X::=X+1; X::=X+2 {{X=3}}.
の導出を表現する証明オブジェクトを構成しましょう。 証明オブジェクトを構成するのに Coq のタクティックを使うことができます。
Example sample_proof
: hoare_proof
(assn_sub X (APlus (AId X) (ANum 1))
(assn_sub X (APlus (AId X) (ANum 2))
(fun st => st X = VNat 3) ))
(X ::= APlus (AId X) (ANum 1); (X ::= APlus (AId X) (ANum 2)))
(fun st => st X = VNat 3).
Proof.
apply H_Seq with (assn_sub X (APlus (AId X) (ANum 2))
(fun st => st X = VNat 3)).
apply H_Asgn. apply H_Asgn.
Qed.
これらの証明オブジェクトが真の主張を表現することを証明しなさい。
☐
Coqの推論機構をホーア論理についてのメタ定理を証明することに使うこともできます。
例えば、Hoare_J.vで見た2つの定理に対応するものを以下に示します。
ここではホーアの三つ組の意味論から直接にではなく、
ホーア論理の導出(証明可能性)の構文の面から表現します。
最初のものは、すべてのPとcについて、 表明{{P}} c {{True}}がホーア論理で証明可能(provable)であることを言うものです。 Hoare_J.vにおける意味論的証明と比べて、この証明はより複雑になることに注意して下さい。 実際、コマンドcの構造についての帰納法を行う必要があります。
最初のものは、すべてのPとcについて、 表明{{P}} c {{True}}がホーア論理で証明可能(provable)であることを言うものです。 Hoare_J.vにおける意味論的証明と比べて、この証明はより複雑になることに注意して下さい。 実際、コマンドcの構造についての帰納法を行う必要があります。
Theorem H_Post_True_deriv:
∀ c P, hoare_proof P c (fun _ => True).
Proof.
intro c.
com_cases (induction c) Case; intro P.
Case "SKIP".
eapply H_Consequence_pre.
apply H_Skip.
intros. apply I.
Case "::=".
eapply H_Consequence_pre.
apply H_Asgn.
intros. apply I.
Case ";".
eapply H_Consequence_pre.
eapply H_Seq.
apply (IHc1 (fun _ => True)).
apply IHc2.
intros. apply I.
Case "IFB".
apply H_Consequence_pre with (fun _ => True).
apply H_If.
apply IHc1.
apply IHc2.
intros. apply I.
Case "WHILE".
eapply H_Consequence.
eapply H_While.
eapply IHc.
intros; apply I.
intros; apply I.
Qed.
同様に、
任意のcとQについて{{False}} c {{Q}}が証明可能であることを示すことができます。
Lemma False_and_P_imp: ∀ P Q,
False ∧ P → Q.
Proof.
intros P Q [CONTRA HP].
destruct CONTRA.
Qed.
Tactic Notation "pre_false_helper" constr(CONSTR) :=
eapply H_Consequence_pre;
[eapply CONSTR | intros ? CONTRA; destruct CONTRA].
Theorem H_Pre_False_deriv:
∀ c Q, hoare_proof (fun _ => False) c Q.
Proof.
intros c.
com_cases (induction c) Case; intro Q.
Case "SKIP". pre_false_helper H_Skip.
Case "::=". pre_false_helper H_Asgn.
Case ";". pre_false_helper H_Seq. apply IHc1. apply IHc2.
Case "IFB".
apply H_If; eapply H_Consequence_pre.
apply IHc1. intro. eapply False_and_P_imp.
apply IHc2. intro. eapply False_and_P_imp.
Case "WHILE".
eapply H_Consequence_post.
eapply H_While.
eapply H_Consequence_pre.
apply IHc.
intro. eapply False_and_P_imp.
intro. simpl. eapply False_and_P_imp.
Qed.
この形での提示は「ホーア論理の証明を与えること」がどういう意味なのかについて、
より明確なイメージを与えてくれます。
しかし、実際の証明を記述するという観点からは完全に満足できるものではありません。
かなりくどいのです。
Hoare_J.vの修飾付きプログラムの形式化の節が、より良い方法を示してくれます。