一次独立の意味するもの

一次独立って何?

一次独立は分かりましたか???

「どんなベクトルの組が一次独立なのか」という判定はできると思います。
しかし、「一次独立の意味するもの」は分かったでしょうか?


例えば
$\displaystyle{u_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix} \quad u_2=\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix} \quad u_3=\begin{pmatrix}0\\0\\1\end{pmatrix}}$
は一次独立ですが、


$\displaystyle{v_1=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix} \quad v_2=\begin{pmatrix}0\\1\\0\end{pmatrix} \quad v_3=\begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix}}$
は一次独立ではありません・・・


「一次独立」にあって「一次独立でないもの」にないものは何だろう・・・?
これが、今回の主題です。

まず2組のベクトルで

$\displaystyle{v_1, v_2}$が一次独立でないとします。

だとすれば、
$\displaystyle{k_1v_1+k_2v_2=0}$
$\displaystyle{(k_1,k_2)=(0,0)}$以外の組が存在する、ということでしたね?
このことが少しでも分からなければ一次独立のページに戻ってください。


$\displaystyle{(k_1,k_2)\neq(0,0)}$のものが存在する・・・
つまり$\displaystyle{k_1, k_2}$のどれかは0ではない、ということですよね・・?
ここがミソですっ!!
まぁここでは、仮に$\displaystyle{k_1\neq0}$としましょうか?



まず$\displaystyle{k_1v_1+k_2v_2=0}$を少し変形しますと、
$\displaystyle{k_1v_1=-k_2v_2}$(ただ移行しただけ)
さて、そこで両辺から$\displaystyle{k_1}$を割ります。
$\displaystyle{v_1=-\frac{k_2}{k_1}v_2}$

はい!ここです!!!!
$\displaystyle{k_1}$で割りましたね???
実は割り算をする前に、絶対に確認しなければならないことがあるのです!!
それは0で割っていないかどうかです。
例えば「3÷0」・・・こんなことは数学では許されません。
$\displaystyle{k_1\neq0}$と仮定したため、この操作は大丈夫なのです。



もし$\displaystyle{v_1, v_2}$が一次独立だとしたら、
$\displaystyle{k_1v_1+k_2v_2=0}$ならば、絶対に$\displaystyle{k_1=k_2=0}$なので、
$\displaystyle{v_1=-\frac{k_2}{k_1}v_2}$
という形にはできるわけがありません。
なぜならば$\displaystyle{k_1=0}$なので、
$\displaystyle{v_1=-\frac{k_2}0v_2}$
となってしまいます。
分母に0が来るのはおかしいでしょ?





さてさて、$\displaystyle{v_1,v_2}$が一次独立でないとしたら
$\displaystyle{v_1=-\frac{k_2}{k_1}v_2}$の形、
つまり$\displaystyle{C}$をとある定数として
$\displaystyle{v_1=Cv_2}$
と表されます。
まぁこの場合$\displaystyle{C=-\frac{k_2}{k_1}}$ですが…。
これは「$\displaystyle{v_1, v_2}$が平行、つまり同一直線上にある!!!」ということを表しています。

・・・分かります?




繰り返しますが、もし$\displaystyle{v_1, v_2}$が一次独立なとき、
$\displaystyle{v_1=Cv_2}$
の形に表すことは絶対にできないのです。



以上のことをまとめます。
$\displaystyle{v_1, v_2}$が一次独立$\displaystyle{\Leftrightarrow}$$\displaystyle{v_1, v_2}$は平行でない!!
$\displaystyle{v_1, v_2}$が一次独立でない$\displaystyle{\Leftrightarrow}$$\displaystyle{v_1, v_2}$は平行!!

次は3組で

例えば$\displaystyle{v_1, v_2, v_3}$が一次独立ではなかったとしましょう。

もしそうだと仮定すれば、
$\displaystyle{(k_1,k_2,k_3)=(0,0,0)}$以外の組み合わせで
$\displaystyle{k_1v_1+k_2v_2+k_3v_3=0}$ となるような$\displaystyle{k_1, k_2, k_3}$が存在します。

つまり$\displaystyle{k_1, k_2, k_3}$のどれかに0ではないものがあります。



$\displaystyle{k_1\neq0}$と仮定しましょう。

すると、
$\displaystyle{k_1v_1+k_2v_2+k_3v_3=0}$
$\displaystyle{k_1v_1=-k_2v_2-k_3v_3}$
$\displaystyle{v_1=\frac{k_2}{k_1}v_2-\frac{k_3}{k_1}v_3}$
となります。
分母に$\displaystyle{k_1}$があるのは、 $\displaystyle{k_1\neq0}$だからです。




こう考えてみると$\displaystyle{C, D}$を適当な定数として、
$\displaystyle{v_1=Cv_1+Dv_2}$
と表せることが分かりました。
そう考えてみると、
$\displaystyle{v_1}$$\displaystyle{v_2, v_3}$の作る平面上にあるベクトルであることが分かります。


見て分かると思いますが、
$\displaystyle{v_1}$$\displaystyle{v_2, v_3}$の一次結合で表されています。

さて、いよいよ本題

さて、以上のことをまとめます。

ベクトル$\displaystyle{v_1,v_2,\cdots,v_n}$が一次独立でないなら、
その内の1つのベクトル$\displaystyle{v_i}$は(ただし、1≦i≦n)、 残りのベクトルの一次結合で表すことができる。



そういうことです。



前々回の議論に戻りましょう。
  • 一つのベクトルの線形結合の全体は直線を表し・・・
  • 二つのベクトルの線形結合の全体は平面を表し・・・
  • 三つのベクトルの線形結合の全体は3次元空間を表し・・・
  • 四つのベクトルの線形結合の全体は4次元超空間を表し・・・
↑これには例外がある・・・というのが前々回のお話でした。


これによると、
ベクトルというのは、空間を作る、いわば“材料”みたいなものです。
“ベクトル”という“材料”をn個集めて「一次結合」という方法を使うことにより、
「直線」「平面」「3次元空間」・・・
などが作れるのでした。
これは、前々回に話したことです。




そう考えますと、「一次独立でないベクトルの組」というのは、
余分な材料が含まれているベクトルの組となります。

なぜなら「一次独立でないベクトルの組」というのは、
その中の少なくとも1つのベクトルは、他のベクトルの一次結合で表すことができる、ということを先ほど述べました。
つまり、他のベクトルを使って代用できるようなベクトルが余分に含まれているのです。
そう考えると・・・確かに余分ですよね?




「一次独立なベクトルの組」というのは、余分な材料を含まない、
空間を作るための、必要最低限なベクトルの組だということを表しています。



まとめますと、以下の主張が正しくなります。
  • 一つのベクトルの線形結合の全体は直線を表し・・・
  • 二つの一次独立なベクトルの線形結合の全体は平面を表し・・・
  • 三つの一次独立なベクトルの線形結合の全体は3次元空間を表し・・・
  • 四つの一次独立なベクトルの線形結合の全体は4次元超空間を表し・・・



言い忘れていましたが、
これからは「一次元空間」や「二次元空間」というように、
単なる“直線”や“平面”のことも“空間”と呼ぶことにします。

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